指輪を身につけて、それをはずせなくなるのが怖かった。

ちょうど3ヶ月前の、カイ先輩のように。

先輩の、あの惨めで可哀想な姿が――未来のあたしと重なるような気がしてならなかった。


今が幸せでも、未来まで一緒にいれるとは限らない。

あたしはそれを、身にもって経験している。


「……それじゃあ仕方ねぇけど」


そうぶっきらぼうにつぶやいたカイ先輩は、少し機嫌を悪くしたようだった。


「ごめんなさい……」


つないだ手さえも離れていきそうで、怖くなった。

ケンカというほどのものではないけれど、付き合って初めての、気持ちの行き違いに、あたしはめいってしまった。


「――クリスマスプレゼントにしようと思ってたのに」


あたしがカイ先輩のほうを見上げると、先輩は困ったような顔をしていた。


「だからおれ、なんもプレゼント買ってねぇんだけど……」


そこでようやく、自分も何も用意していなかったことを思い出し、

そのことをおそるおそる白状したら……カイ先輩もやっと笑ってくれた。