たまにお父さんも、暇な時はお兄ちゃんと走りに出かけたりもしている。

そんなつながりで、父はカイ先輩とも面識があり、そしてお父さんはカイ先輩のことをそんなに悪く思っていないらしかった。


「うーん……あの子はいいヤツだと思うけど……いやでもやっぱり薫はまだ高校生だし……」


念仏のように、ぶつぶつと独り言を言い出したお父さんに、あたしとお兄ちゃんは顔を見合わせて笑った。

胸に湧いた不安の種も、どうやらそう心配するものではなさそうだ。


「薫。おまえは忘れてるかもしれんが、中林家の高校生の門限は10時なんだが」


意表を突かれて、あたしは笑うしかなかった。

確かにすっかり忘れていたが、あたしの門限は一応22時なのだ。


今日だって、家に帰り着いた時間は、門限をかるく30分も越えていた。


「明日から、門限10時。厳しくいくぞ。父さんがいない日だって、隼人に見張っててもらうからな」


じろりとあたしをにらんでそう言い放ったお父さんに、あたしは無論逆らえるはずもなかった。