「――どこのどいつだ……」


大地を割って響いたような、お父さんの低い声に――あたしはたじろいだ。

目が……目が、完全にヤバい。

マンガだと、炎がメラメラ燃える絵になっているに違いない。


そんな状況になっても、相変わらず兄貴は笑っている。


「カイだよ。父ちゃんも会ったことあるだろ?」


そんな、相手の名前までばらさなくても……!

あたしはなおのこと慌てたのだが、意外にも、お父さんのバックで燃えていた火は消えた。


「――カイくん……?あ、あのローレルに乗ってる子?」


中林家の車好きは、元はといえば父にはじまる。

お父さんは某ディーラー勤務。

昔から車が好きだったらしく、やっぱり若いころは、兄貴やカイ先輩と同じようにサーキットを走りに行っていたらしい。


だから兄貴の車遊びには理解があるし、あたしがサーキットについていくのにも何も言わないでいてくれる。