全身を襲う寒気に、あたしは思わず自分の身体を抱きしめた。


「ああ、ごめんな。風邪か?すぐ家まで送るから」


そんなあたしを、幸いにもやはり具合が悪いのだと思ってくれたようで、カイ先輩はすぐに車を発進させた。


「体調良くなったら、メールくれな。心配だから」


いつものように笑って、あたしの頭を撫でたカイ先輩に、胸がいっぱいになる。

やっと、あんなに欲しかったものを手に入れられたんだ。

喜びと、まだ信じられない、という思いが――あたしの頭の中をぐるぐると回っている。




でも今のあたしには、やらなければならないことがあるような気がした。

森川さんの元に行きたい。


彼に会わなければ、あたしは前に進んじゃいけないような気がしてならなかった。


「また――夜、電話していい……?」


カイ先輩の声が、あたしを現実に引き戻す。

“恋人同士のような”会話に――思わず胸が高鳴り、

これからは、これが当たり前になるのだろうか、と、なんだか妙な不安を覚えたあたしだった。