「うそ……」


「うそじゃないです……」


「ほんとに?」


「……ほんとに」


さっきと同じようなやりとりに、ふたり、顔を見合わせてくすくすと笑った。


「――よかった……」


安堵のため息をもらし、カイ先輩はあたしの身体を抱き寄せた。

サイドブレーキが腹に当たって痛い。

この距離が、なんとももどかしかった。



あたしのなみだは、嬉し涙に変わり――カイ先輩の胸を濡らした。


「――泣くな、おれまで泣きそうだ」


少しだけ、声を震わせたカイ先輩の顔は、強い腕に邪魔されて見上げることが出来なかった。









「……森川に感謝だよ」


ふと、カイ先輩が静かにつぶやいた。

その名を聞いた心臓がびくんと跳ねて、あたしはカイ先輩から身体を離した。


「森川に、相談に乗ってもらってたんだよ」


カイ先輩は、おれってガキみたいだろ?、と、あたしに笑ってみせたけれど――

あたしの笑顔はひきつったまま、動かなかった。