「――あのさ」


こほん、と、カイ先輩がひとつ咳ばらいをした。

どうやらここで、本題に入るらしい。





「おれ……好きなコ、出来たんだ」









さほど、ショックはなかった。

少しだけ、動揺が顔に出たかもしれないけれど――窓の外を眺めていたおかげで、カイ先輩には見られなかったはずだ。


「――そうなんですか……」


その相談のために、あたしはここに呼ばれたのだと、悟った。

“悲しい”だとか、“嫉妬”だとか――そういう気持ちは、あまり思い浮かばなかった。

不思議なほど、あたしの心は穏やかだった。


「告白、しようと思う」


力強いカイ先輩の言葉にも、あたしの胸は痛まなかった。

それくらい病んでしまっていることが――自分でも可笑しい。


「おれも、前に進もうと思う。いつまでも、過去を引きずってられないしな」


カイ先輩が、不安げに笑ったのが意外だった。

カイさんなら、もっと自信持っても大丈夫なのに。


カイ先輩みたいに、明るくて優しくて、メイド服着てもかっこよくて、ドリフトが上手い人――どんな女の子でも、好きになっちゃうよ――……