半ば無理やりに乗せられた助手席で、ぼんやりと流れる景色を眺めていたけれど――

やっぱりなにもかもが止まってしまったかのようで、無機質なものにしか見えない。


「……ほんとに体調悪そうだな」


黙りこくったあたしに、カイ先輩は少しだけ困ったように笑った。

学校から少し走ったところのコンビニに、カイ先輩は車を停めた。


「10分だけ、時間くれないか?」


その言葉に、あたしは無言のままうなずいた。

コンビニに用なのかと思っていたが、カイ先輩が車から降りる気配はない。

そのまま、ただマフラーの音が響く車内で――ふたり静まり返っていた。














「……テスト、どうだった?」


長い沈黙のあとの、拍子抜けするような言葉に、あたしは外を見たまま小さく笑った。


「――ぜんぜん……だめでした」


「おれが教えた数学も?」


「……数学が一番だめでした」


「……マジかよ」


ようやく、自然に顔がゆるんだ。

少しだけ声をだして笑うことが出来て――あたしの胸の中が、ほんのちょっと、ラクになった気がした。