床に座ったまま、森川さんにきつく抱きしめてもらって――もうどれくらいの時間が経ったのだろう。

カーテンのすき間から差し込む昼のおひさまの光だけが、なんだか妙に現実的だった。


「――テスト勉強、頑張れる?」


森川さんがあたしの顔をのぞきこみながら、小さく笑った。

その表情は、なんらいつもと変わりない――“あたしと付き合っていた頃”の、森川さんだった。


「……もうだめです……」


あたしはうつむいたまま、苦笑して首を小さく横に振った。


「テスト、頑張って。最後にはきっと、いいことが待ってるから」


森川さんの言葉を、ぼんやりと聞きながら――もうあたしは、自分に嫌悪感を持つことしか出来なかった。

あたしが滅茶苦茶に傷つけた森川さんは、最後まであたしのことを心配してくれた……


「あたしは……森川さんになにも出来なかった……傷つけてばかり……」


枯れたなみだが再びこみあげてきて、あたしは両手をついた。

そんなことないよ、と、ずっと、森川さんは何も言わずにあたしを抱きしめてくれて――

最後に笑って、小さく、つぶやいた。





「夢を、見ていた……幸せな、夢だった」