「――もう、別れない?」
頭の中が真っ白になって、時間が止まったようだった。
身体が冷たくなり、制服のシャツの下に鳥肌が立ち――指先が、震えだした。
息が、出来なくなる。
「短い間だったけど、楽しかったよ」
あたしを無視して、森川さんの口から語られていく別れの言葉が、あまりにも非現実的すぎて――
あたしは、まだ夢の中にいるのだと錯覚するほどだった。
「……どうして……」
振り絞るように出した言葉には、あたしの様々な思いがこもっていた。
「あたしは――別れたくなんてない……!」
素直に伝えられたその思いは、あっさりと森川さんに弾かれた。
「じゃあ……昨日はどこにいた?
こんなに早くウチに来れるなんて――まさか、家から来たなんて言わないよね?」
冷たい、あたしを哀れむような目に――あたしは一瞬で動けなくなった。
助けを求めるかのように、無意識のうちに森川さんのほうへと動いていた手も、宙に浮いたまま、止まった。