思いの外早かったであろうあたしの訪問にも、土曜日なのに制服を着ているあたしにも、彼は驚く様子を見せなかった。


「ごめん、こんな朝早くに呼び出して」


森川さんは少しだけ笑って、あたしを部屋へと招き入れた。

なんだか、自分が必要とされている気がして――あたしの胸は高鳴った。


「座って」


いつものようにコタツに座り、彼もあたしの右隣に腰かけた。


「今日はどうしたんですか……?レポート、大丈夫なんですか?」


「うん。それより……話したいことがあって」


そこには、付き合い始めてから見せるようになった優しい笑顔は無くて、あたしは少しだけ不安になっていた。

考え込んでいるような、気まずい沈黙が流れて――彼が静かに口を開いた。





「おれは薫を、幸せにしたいと、思ってた」





思わぬ言葉に、あたしは驚いて森川さんを見つめた。

ひとつだけ、気にかかったことは――過去形になった語尾。


彼はあたしの目を捕えたまま、はっきりと言った。