マナーモードにしていたケータイのバイブレーションで、あたしは飛び起きた。

慌ててカイ先輩のほうを見ると、幸いなことに先輩は今の物音くらいじゃ起きないようだ。


起こさないように、そっと部室を出て、折りたたみのケータイを開いた。


「――はい……」


着信は――森川さんから。

こんなに朝早いモーニングコールは初めてだったけれど、すぐに、昨日の夜にあたしが電話をかけたせいだとわかった。


『おはよう』


眩しい朝日に、目を細めた。

あんなに冷たかった雨はすっかり上がり、雲の切れ間から暖かな太陽が登ってきている。


「昨日はすみません。あんな遅くに電話なんかかけて……」


寝起きの、全く働かない頭で、あたしは昨日の言い訳を必死に考えていた。


『――あのさ、今からウチに来てくれない?』


「……えっ……?」


『なるだけ早く、来て欲しい』


有無を言わせぬその強い言葉に、あたしはただうなずくことしか出来なかった。