「ピザ、30分くらいで来るってさ。それまで、コンビニにジュース買いに行かね?」


「……はい!」


財布ひとつで、あたしは慌ててその背中を追いかけた。

部室を出ると、冷たい雨が地面を濡らしていた。


「おれ、傘持ってない」


手元にあるのは、ピンクの水玉模様の小さなビニール傘だけ。

仕方がないから、ふたりでその小さな傘にぎゅうぎゅう詰めで相合傘をした。


「ちっちゃいな、これ。おれかなり、はみだしてるし」


「文句あるなら出てください!」


なんだか最近気まずかった雰囲気も、ようやく元に戻ったような気がした。

ぶつぶつ文句を言いながらも、あたしが濡れないようにわざと傘を低く持ってくれるカイ先輩は、やっぱり優しい。


「――危ない」


急に、腰に手を回されて、身体ごとぐっと引き寄せられた。

自転車が通りすぎていく、その光景が――まるでスローモーションのように、ゆっくりと流れている。


「大丈夫か?」


あたしをのぞきこむ笑顔に、ようやく我に返っても――どきどきとうるさい胸の高鳴りは、そう簡単には抑えられそうになかった。