遠くを見つめたまま小さくつぶやいた彼に、あたしは照れながらも、ずっとずっと気になっていた質問をした。


「どこが……いいんですか?あたしなんか……」


それが、どうしてもわからなかった。

顔は普通だし、スタイルがいいわけでもなく胸も小さい――性格だって、ヤなとこたくさんあるあたし。

いつも、自己紹介文の“自分の長所”の欄に書くことがなくて困ってる。


「――理由なんてないでしょ?人を好きになるのに」


森川さんははぐらかすように、またシロと遊びだした。

あたしも地面にしゃがんで、シロのおっぽをなでる。


でも、はじめて、間接的に聞く、その“好き”という言葉に――あたしは嬉しくて、また照れてうつむいた。





「……たまに泣きそうな顔してたから」


「――え……?」


森川さんは、シロの頭を撫でながら、あたしの目を捕えて言った。


「今にも泣きだしそうな、つらそうな顔をする。だから、目が離せなくなった」





またひとつ、強い風が吹いて――周りの木々が、ざわめき始めた。