「そうかな?そんなつもりはなかったんだけど」


もう森川さんは遊んでくれないと悟ったのか、今度はシロがあたしの足元に座った。

そんなシロの頭をなでて、あたしはまた愚痴をこぼす。


「あたし、森川さんに嫌われてると思ってました。兄貴にくっついてモ会の部室にくるようになって――森川さんだけ、全然喋ってくれなかったから」


「ははは、ごめん」


仰向けに横になって、あたしの膝に触れるか触れないかの距離にある、森川さんの綺麗な顔に――あたしはいつも以上にどきどきしていた。


「――好きな子とは、うまく話せないから」


さらりと言ってのけた彼の言葉に、あたしは恥ずかしくなって慌てて顔を背けた。


「……からかわないでください……」


「ほんとだよ」


たぶん今きっと、あたしは耳まで赤くなってるはず。

森川さんは少しだけ微笑んで、またシロのほうへ向き直った。


「ほんとはずっと、薫とこうしたかった」