ふたり(……2匹?)は展望台の周りを駆け回り、あたしはその様子をデジカメにたくさんおさめた。

まるでいつもとは別人のような森川さんがあまりにも新鮮だった。


青空を、ゆっくりと雲が流れていく。


「――シロ、おれもう疲れたよ」


森川さんが、荒い息であたしの座るベンチに倒れこんだ。

森川さんによって“シロ”と名付けられた、雪のように真っ白な毛の犬は、まだ遊び足りない様子で彼の足元にまとわりついている。


穏やかな時間に、あたしは目を細めた。


幸せだった。

もっともっと、こんな時間が続けばいいのに。


「森川さん――いつもは無口なのに、シロには特別ですね」


「……そう?」


「うん。部室でみんなといても静かじゃないですか。
あたしなんて――最近ですよ。森川さんにまともに喋ってもらえるようになったの」


あたしは愚痴みたいになり、でも森川さんはそれを――優しく見つめてくれていた。