彼と初めて話したのは球技大会。
先輩に片付けてと頼まれた大量の用具を運んでいたら
「大丈夫?」
と声をかけてくれた。
「大丈夫です。」とそっけなく答えてし
まった私に、
彼は「半分持つよ」と笑顔で言いながら、
半分以上の用具を持ってくれた。
用具を運び終わって、お礼をするときに
彼が指を切っているのに気がついて
「あの…指……」
「あ、さっき切っちゃったんだよね。
ごめんね、傷見えちゃったね…」
頭を横に振って、彼に大丈夫だという意思を伝えた。
良かったと安心そうに微笑む彼。
確か、絆創膏をポケットに入れたいたはず…
「これ…」
「…絆創膏?」
「……良かったら…」
「えっ、いいの??」
肯定の意味を兼ねて頭を縦に振り、
「…ありがとうございました。」と伝えた。
「いや、こちらこそありがとう。」
そう言ってくれたあの時の笑顔は、
私の脳裏に焼き付いた。