「…………さくら!」




よかった。



さくら…………目覚ました。



ほっと息をついて安心したけど、のんびりはしてられない。



実際、さくらは意識が朦朧としていて今にも目を閉じそうだ。



「…………もう大丈夫だかんな」



さくらに小さくそう言うと、そのままさくらを抱きかかえた。



ただでさえ雪で歩きづらい上に人ひとり抱えて歩くのは重労働だけど、早く行かないとさくらも危ない。



そう思った俺は、少しも足を止めることなく雪の上を歩いた。





「……………寒い………………」





しばらく無言で歩き、そろそろホテルに着くかなと思い始めていたときだった。



突如、腕の中のさくらがそう小さく声を漏らした。



まあ、そりゃそうだよな。



何時間も一人で雪の中にいたんだから、寒いに決まってる。