「ほんとだ。帰らないと」



さくらが慌てて教科書をバッグにしまう。



「大丈夫?送ろっか?」



「大丈夫です。ありがとうございました」



さくらが律儀に頭を下げる。



「ごめんな。関数しか教えてやれなかったよな」



「いえ、関数やれただけでじゅうぶんです。

ありがとうございました」



さくらはそう言って教室を出て行った。




「…………」



さくらが帰ったあとの教室はどことなくガランとしている。



最初はそこまで気持ちも大きくなかった。



それが今となっては、こんなにもさくらが自分にとって大きな存在になっていることに驚いた。



もうわかってる、自分の気持ちは。



俺は、さくらのことが…………