「なに?梓紗ってばナンパされたの?」



「朱里だ!そーなんだよ、電車では痴漢にあったんだから!!」


「あっ、ちょ、声でか!!」


と言われ、頭をコツんと叩かれる。



周りを見れば、苦笑いをしながらこちらを見ている人数名。



お恥ずかしい…。



「あのね!」


「その話は、学校着いてからね」


「えぇぇぇぇぇ」


やべ、文句言っちゃった!



朱里に文句言うと、すーぐ拗ねるから…。


「文句あるなら、もう二度と一緒に行ってあげないから」


えぇ!!


「わ、分かったよ!ごめんね!!」


「うん、分かったならいい。エラいぞ」



そう言って、朱里は私の頭をそっと撫でる。



“朱里”と言うのは、親友で私の幼なじみでもある…



杉咲 朱里 -akari sugisaki-



もう、わたしの姉のような存在。



「梓紗の事だから、駅を出たところで学校分からなかったんでしょ?」



「おぉ!良くおわかりで!!」



さっすが私の姉!!

じゃ、ないけど…


「ところで、明葵は?」


「あぁ~、明葵ね。
たしか、さっき…LINEが…」


とか言って、スクバをゴソゴソと漁りだす。


「やべ、スマホ忘れたかも〜」


「えぇ!?」


携帯忘れて、そんな軽々なの!?



「梓紗。

連絡をするんだ!明葵に!!」


でたよ!


自分がめんどくさいからって!


こういう場合は、本当は持ってきてるんだよね。


「へーへ」


嫌々ぽく受け入れると、満足そうな顔をする。


たまにそれが、イラッと来るんだよね。



LINEを開き、

「aoi」と書いてある、トークを開く。


aoi


今、朱里と駅にいるんだけど、明葵どこ?>



送信すると、5秒後に返信がくる。


はや。


<え、まだ私電車だよ。
駅に着くの早くない?



「え、まだ電車なの…?」



これだから、方向音痴は!!!


その電車、絶対違う駅に着くよ〜!




いやいや、逆に。
着くの遅くない!?絶対違う駅に着くよ!>



と送ると


3秒で返信がくる


<……(´;ω;`)ウゥゥ 私、遅刻…?




はぁ?とにかく、次の駅なに?>





まだ、時間はあるけど…。


イケメン探しはどうなったのよ。


言い出しっぺ明葵だよ


明葵は、イケメン好きだから。


あ、明葵って言うのは


イツメン好きで私の幼なじみ。


間宮 明葵-aoi mamiya-



方向音痴で優柔不断。

しかも、どこか抜けてる。

とことん、地味な女の子。


だけど、ほっとけないからって理由で私達がずっと守ってきた。



だけど、明葵にも好きな人が出来たんだ。


そんなへぼい理由で

進学高校をきめた。




たまたま持ってた、明葵の写真を見せて

「このくらいの背でこんな子見ませんでした??」



と駆け回る私と朱里。


いない…。



「朱里。
学校に電話したほうが…」


「て、言っても…
電話番号知らないし!!!」


あ、そうだった!


知らないんじゃ…意味無いよ。


「はぁ……」


そうため息を付いたきり、一向にしゃべらなくなる朱里。


「あか、り?」


恐る恐る聞いてみると


ひらめいた顔をして私を見てくる。


なんか変な無茶ぶり辞めてよ~


「梓紗!学校先に行ってて!」


「へ?」


びっくりして、つい間抜けな声が出てしまう。



「そして、先生に伝えるの!
おねがい!!」


両手を前にして、目をつぶってお願いされる。


「え…っと…朱里は?どうするの?」


「その間、ずっと探してるから。
もし、見たって人いたら連絡するから。

とにかく、梓紗は先生に2人遅れますって伝えて!」


「え。あ…う、うん!」


焦りながらもスクバを持ち直して、全力ダッシュをする。





約25分くらいで着いた。


「はぁっはぁっ…やっ…と…着いたっ…!!」


キレキレになりながらも、しゃべる私はバカなんだろうか。


「職員室…どこっ!?」


着いたのはいいものの、職員室がどこか分からなくて、焦りまくる私。



とことん、運がないなぁー!


「どうしたの?」


焦ってる私に、優しく声をかけてくれる。


誰かが…って…


「あぁー!」


大声を出したのはあたりまえ…


だって…


明葵がいるんだもん。



「あ、おい??!」


「うん、明葵だよ。
どうしたの、そんな慌てて」



えぇえ!!


先に着いてるなら、言ってよ…!!


「なんで連絡しなかったの!」


「したよ…!だけど、みんな見てくれないから、今駅に行こうとしたら、梓紗っぽい人がいて…心配したんだからね…!!」


「心配したって…こっちのセリフだよ…!」


あーあ、無駄な焦りした〜!


「ご、ごめんっ…
で、でも!見なかった梓紗も悪いからね!」


「はいはい!とりあえず、朱里に…」


と言おうとした時、


「入学式を間もなく始めます。
入学生徒達は、体育館に集まってください」


という、アナウンスが流れた。


「「えぇーっ!」」


明葵とハモらせて、足を急がせた。


だけど、前を見てなくて人にぶつかる。






「きゃっ…」


「あ、ごめん!
って、今日の子じゃん!」


と言われて、顔をバッとあげる。


「あ…ほんと、だ。

ここの高校だったんだ…」


そう、電車で助けてもらったイケメン!


明葵が見たら、間違いなくしつこいだろうな…


だってもう、女子が見てるもん。


「あれ?先輩にタメ口はダメだよ」


「えっ…せんぱっー?!」


先輩だったの!?


全然、分からなかったよ!!



「ご、ごごごご、ごめんなさい!

べ、別に…悪気があった訳じゃ…!」


超カミカミだね、私。


そう勝手に焦ってると


先輩は笑った顔をした。


あっ…笑顔。


ドキンッ


「いいよいいよ。

だけど、お仕置きしないとね…」


とか言って、私に近づいてくる。


「おし、おき…?」


戸惑ってると


先輩の手が私のおデコに当たって


そこだけ、ジーンっと熱くなる。


前髪をあげられて、


チュッ


という、音と私のおでこに何かが触れた気がした。


理解するのは遅くて



理解した時には、もう私の顔を真っ赤だった。










「へっ?先輩、今っ…なにしてっ」


理解してるのに、嘘っぽく感じて先輩に答えを要求する。


「何ってお仕置きの、キ・ス」


「……」


周りを見ると、冷たい目線で私を見つめる人達と、私と同じで顔を赤くしてる人達がいた。



口を開けて、ポッカーンとしてると


頭にババチョップを食らう。


「あいでっ!!」


「連絡しなさいよ」


上を向くと、頬を赤らめた朱里がいた。


「あ、あかっ…り!」


思わず、朱里に飛びつく。


とにかく、顔を隠したかった。



うぅ~!恥ずかしい〜!






「戸田先輩!あたしにも!」


「え、やだよ。
俺もう、行かなきゃ。

じゃーね!平岡さん!!」


「え、えっ!名前もっ!」


名前も分かってたのっ!!?


もうっ!

なんか意味わかんなくなってきた!!



とりあえず、


「先輩のばーか!」


小声で叫んどきます!




「はぁぁあ!??」



「うっさい!」


そうしてボコッと1発叩かれる。



痛い…。


とととと、というか!


「あの先輩が!?」


「そうよ!ね?明葵!」


先輩…というのは…。



…あぁー!思い出したくない!


「名前は、戸田…」


「きゃーっ!!!」


あ…名前聞こえなかった。


というか、先輩どんだけ人気あるの!!



「あっ!平岡さん!」


「えっ…あ、はい!?」


びっくりして、裏返っちゃった。


な、なんで私に話しかけてくるんだろう…


「今日、話あるんだけどいいかなっ?」


「……はい?」

と聞き返すと、一瞬先輩の顔がニヤついたような…


なんて!気のせいだよね!


「聞こえなかったの?」


と言って、私の耳元まで顔を運ぶ。


何かと思って、固まってると


「ふっ」


「ひゃっ」


耳に息をかけられ、一瞬ゾクッとした。


耳…弱いから…。


「今日、話しあるから。放課後、クラスまで行くね」


そう言われ

頭に手を乗っけたと思うと、ぐっと力を入れ、強制的に、コクんとされた。


「っ…」


何なの、あの先輩!



ムカつく!!!!