それから気まずい空気が数日続いていたため、自分の部屋にいることが、多くなった



ざっくりとだが、父から話を聞いた。
その家の主は柳原株式会社の社長・柳原巧で、その息子が次期社長・柳原颯馬である。


和樹と巧には柳原株式会社の顧問弁護士という繋がりがあった。

巧は昨年心筋梗塞になり、いつ何があるかわからない状態で、もうすぐ颯馬が社長になる。巧としては、自分が元気なうちに颯馬には妻を迎えてほしいという願望があった。




柳原家を訪れるのは明日
私はどうしたらいいの…お姉ちゃん

愛里の言葉が心に残る

わたしは、姉よ。しっかりしないとダメなの。

「大丈夫よ、私。大丈夫大丈夫」

胸に手を当てて心を落ち着かせる。






「お姉ちゃん……」
ドアの向こうにいた愛里は、ドアノブに近づけた手を戻した。