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「よく頑張ったね、ぼっちゃん」
にっこり人のいい笑顔でおばさんが馬車の方まで案内してくれる。
「ほい、この馬車を使いな」
案内された馬車は、真っ黒で屋根があり一室のようになっていて、どこか気品がある。
城にある馬車にそんなに劣らない気がするくらい。
「この馬車を使うのっていつも…?」
「貴族のお偉いさんが使うことが多いね」
あーやっぱり。
「そんな高そうな馬車乗れないよ」
ただ馬の世話を少しの間やっただけなのに、これは贅沢過ぎる。
断わろうとすれば、おばさんに首を振られた。
「お姫様を探しているんだろう? 見つかるといいね」
「えっ」
驚いておばさんの顔を見れば、にっこりと微笑まれた。
全てわかっているよ、といった笑み。
僕らのことを知っていたようだ。
そういえば馬の世話をしている時、帽子が邪魔で取ったんだった。
僕の金春色の髪は丸見えだったわけで、即ばれてしまったというわけか。
「さあ、お行き」
馬車の扉を開けて、おばさんが言う。
「くれぐれも柄の悪い奴らには気を付けなね」
「ああ、感謝する!」
「ありがと、おばちゃん」
礼を言って、僕らは馬車に乗り込んだ。