「あーバベルー、ごめんー」



店に入って目に飛び込んできたのは、カウンターに突っ伏したフリュイの姿だった。


妙に間延びした声が僕に謝罪した。



「どうしたんだ?」



んー、と言いながらゆるゆると上げられたその顔は、真っ赤だった。


僕は慌てて、その額に触れる。



「熱い。熱があるな」



そういえば、僕よりフリュイの方が走ったり状況を見て隠れるよう僕に指示を飛ばしてくれたりしていた。


汗をかいたのをそのままにしていたから良くなかったのかもしれない。


気を張ったりしてくれていて、カフェ・レヴに着くまで頑張ってくれていたのかもしれない。



「おかしいなぁ、丈夫なんだけどなぁ」



首を傾げたフリュイは、そのまま体ごと傾いていって、瞬時に反応できた僕はそれを支えにいった。



「休もう、フリュイ」


「うーくらくらするー」


「しっかり休んだら治るよ」


「うんー」



僕はフリュイを抱き上げて、リーシャに許可を貰った部屋まで彼を運んだ。


男の子をお姫様抱っこするのは少々気が引けたし、フリュイは弱い力で足をばたつかせて嫌がったけれど、そんなことを言っている場合ではないので無理やりそうして運んだ。



「よいしょっと」



今は旅行中のオーナーの部屋を借りて、そこのベッドにゆっくりとフリュイを横たえさせた。



「バベル、体温計持ってきたよ」



コンコン、と扉が叩かれて、キィ、と扉を開けたリーシャが顔を覗かせる。



「ありがと」



それを受け取り、フリュイに向き直った。