***
ルディの飛ぶ方向や、騎士が走って行った道を頼りに進めば、すんなり例の騎士の姿が見える開けた所に着いた。
「レティシア様!!」
騎士が周りを囲んでいて本人の姿は見えないが、騎士がレティシアの名前を呼んだ。
どうやらそこにレティシアがいるらしい。
「レティ……」
思わずレティシアの元へ飛び出そうとした僕の手をフリュイがとって、騎士やレティシアに見えないように太い木の裏に隠れさせて自分も僕と一緒に隠れた。
フリュイは、僕に首を振った。
小声で「様子を見よう」と言われて、フリュイが騎士に見つかりたくないことを思い出し、とりあえず頷き様子を見る。
「何話してんだろ?」
「聞こえないな」
レティシアがいるらしき場所から僕がいるここは、案外遠くて声はボソボソとしか聞こえない。
話しているのがわかる程度で、内容は全くわからない。
……あれ、これがレティシアの声?
なんとなく聞こえるレティシアの声は、記憶の中のものよりも低いような気がした。
もしかしたら会っていない間に変わったのかもしれない。
何せレティシアと一番最近会ったのは、10年前の7歳の時なのだから。
だけど、どこか違和感を感じる。
女の子は声変わりをするといっても、そんなに目立たないものではなかったか?
確かに今聞こえるレティシアの声からは、あのレティシア特有のような声の透明感を薄々だけど感じる。
だけど、鈴のような響く声ではない気がするのは、気のせいだろうか。