***



「なんだここ。空気最悪だな」



闇市に訪れている僕らは、暗い中ぼうっとした薄暗いランプが点々とあるところにいた。



「闇市ってそういうところっすから」



平然と言うあたり、ジーノはここへ来たことがあるのだろう。


アドルフもどうやら来たことがある様子だ。


そのすぐ横にいるカーラは、嫌そうに顔を歪めてアドルフの服の裾を摘んでいた。


カーラは置いてくるべきだったかもな。


その赤髪だって目をつけられそうだ。



「カー」


「カーラ、フードを被れ」



うわ、アドルフに先を越された。


せっかく僕の良いところが……。



「何故です、アドルフ様」


「なんでもだ」



ぐいっと無理やりカーラにフードを被らせるアドルフ。


くっ、男らしいところ見せてきますな。



「絶対にフードを取るな、わかったな」


「はいっ」



……ん?


カーラの頬が少し火照って見える。


んん?


あー……もしかして。



「王子、緊張感が足りませんね。何をニヤついておられるのですか」


「やーなんでもないよー」


「?」


「応援したくなっちゃうなー」


「はい?」


「いやいや」



どうやらカーラの恋心には気付いていないらしい。


その額に傷のある顔じゃ今まで女からは怖がられていそうだし、そういうのは鈍いのかもしれないな。


疑い深くアドルフからジトーっと見られたので、僕は体を反転させてジーノに言った。



「ジーノ、情報収集頼むぞ」


「あいあいさーっ。主催者側に知り合いがいるみたいなので、行ってくるっす」


「ああ、行ってこい」



ジーノを見送ってまた2人の方を向けば、すごく場違いな気がしてきた。