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目を開ければ、ビルの間の狭い幅から藍色と丸になりきれていない小さな黄色が浮かんでいた。
「夜になったのか………」
身体の重さを感じ、また目が閉じられていく。
不恰好な月が僕を照らして少し眩しい。
「あーもうなんだよ、頰っぺた痛いな」
突然感じた痛みに閉じかけた目を薄っすらと開けた。
そして頬を手の甲で擦って。
「あれ、血……?」
ほとんど血は固まっていたけれど、流血していたことに気付いた。
「………あっ!!」
それと同時に、さっきの戦いを思い出して僕は飛び起きた。
そうだ、男が後ろから飛びかかってきて防げなかったからこうして倒れていたのか。
辺りを見渡し、見つけたのはカーラだった。
「カーラ! 起きろカーラ!」
僕のすぐ横に倒れ込んでいた彼女を揺すった。
「うっ……」
腹を抑えて痛そうにしながら目を覚ました彼女は僕を見上げて、声を上げた。
「…っ! バベル様、すみません!」
「何が?」
起きてそうそう謝られるようなことをされただろうか。
特に何もなかったと思うけれど。
「そんなことより、フリュイは?」
僕がフリュイを探すのを見て、言いにくそうにカーラが口を開いた。
「…フリュイ様が連れ去られました」
「!」