「ええ……、実は父がもう一人、妾が欲しいそうで。貴女の座敷に居た新造、今は籠女になっているのでしょう?」

「まさか──あげはの事じゃないでしょうね」

「さぁ、どうでしょうねぇ」

白々しい、と珠喜は唇を噛んだ。睨み付けようと、貞臣はただ笑うだけで。

油断も隙もないとはこの事だ。

「あげはには手を出さないでちょうだい。貞臣さんにもそのくらいの情はあるはずだわ」

「生憎ですが、貴女の指図は受けませんよ。篭女楼が首を縦に振ればそれまでです。同じ籠の鳥になれるのだから嬉しいでしょう?」

「……っ!貴方という人はどこまで!!」


貞臣の頬を打った右手が、熱く痺れる。