その晩、あげはは珠喜の言い付け通り楼主の部屋にいた。 「──さぁ、あげは、此方においで」 楼主はあぐらをかき、ここに座れと言うかのように膝を叩いた。 無言のまま頷いて、あげはは楼主の上にちょこんと腰をおろした。 「お前は美しくなった。そろそろ花を咲かせてもよいだろう」 楼主はあげはの絹糸のような長い髪を弄びながら、耳元で囁く。 中年ならではの、生臭い吐息がかかり、あげは僅かに身体を震わせた。