珠喜が酷い、と唇だけで言うと女将がニヤリと笑って告げた。
「酷い?アタシらはね、随分と優しくしてやってるよ?お前が間夫にうつつを抜かしているのも許してやってるじゃないか」
「間……夫……?」
「とぼけちゃいけないよ。──良い仲なんだろ、柏木の若旦那と」
「貞臣さま……?」
「そうそう。楼主もそれで偉くご立腹なんだ。なんたって篭女楼の華が、情夫を作ってるんだからねぇ」
「わたくしのせいだと言いたいの?わたくしに非があるなら、何故わたくしでなくあげはなの!?」
髪を振り乱し、珠喜は叫ぶように問う。
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