悪寒に珠喜は小さく身震いした。


「うん?浮かぬ顔だがあの妓の初めてが儂では気に食わんか?」


不機嫌な客の声に、慌てて笑顔をつくる。


「まさか。初めてが旦那様とは喜ばしいですわ」


喜ばしいものか。

むしろ吐き気が、する。


「そうか。お前がそう言ってくれると安心するな」


聞きたくない。
耳を塞ぎたくなる衝動をどうにか鎮めて、短く相槌を打った。