薄ピンクの桜の花びらが

ふわふわと舞い落ちてきた。


「わ……綺麗」

わたしは、思わず感動の言葉を洩らした。


「春綺、行くよ」

親友の優花が隣で言った。


「待って優花。この花びら掴みたい!」

「あんた好きだよねー。桜」

「うん!」


わたしは思い切り背伸びをしながら

舞い落ちてくる花びらを掴もうとした。



「入学早々遅刻しちゃうよー?」

優花は呆れたように言った。


わたしはいっこうに桜の木から離れられない。



そもそも、レベルが高いと言われていたこの高校を

必死になって受験した理由は、この桜だったんだもん。


大きくて立派なソメイヨシノの木は

この、渓南高校の名物。


大の桜好きのわたしには持って来いの高校だった。



「んーー!!取れないー」

以外とタイミングを取るのが難しく
花びらはなかなかわたしの手の中には納まってくれない。


苦戦していると、背後からすっと細い腕が伸びてきて、いとも簡単に花びらを掴んだ。




「えっ?」