「私とあなたって会ったことないわよね」

「そうだねー。
ボクは大晦日パーティーって3年前初めて来たんだ。
ティアりんはそのときはルーメンにいて、今日のが帰ってきて初めてのパーティーだから、今日がはじめましてでも仕方ないかも」


確かにティアはルーメンに行ってからの5年間、魔物退治をするとき以外はネブラに帰ってこなかった。

ましてやパーティーに出席することもなかったため、彼と顔をあわせる機会はなかったのだ。


「なるほどね。
……で、その"ティアりん"って何かしら」

「かわいいでしょ?」


可愛いかどうかはともかく聞いてて耳に引っ掛かるのだけは間違いない。
だが、トリトの目がキラキラしているのを見る限り彼がこの呼び方をやめる気は無さそうだ。


顔のいいイリアの息子なだけあって、トリトも顔が整っている。

そんな彼の、目をうるうるさせての上目遣いはかなりの破壊力があった。
ティアの庇護欲を強力に掻き立ててくる。


「…ま、いいわよそれで」

「やったぁ!じゃよろしくね、ティアりん♪」


なんだか全力でふりふりしている耳としっぽが見える……。
随分カワイイ子犬がいたものだなと心の中で感心していた。