「それだ、エリザが怒ったのは。
エリザには弟さんがいるんだが、昔から仲が悪いらしくてな。
嫌いな弟さんの息子さんの話を出されてキレたんだろうな」

「ただキレたっていうの?あれ…。
というか、そもそもお母さんに弟がいることすら知らなかったんだけど……」

「エリザが教えなかったからな。
エリザがいうには、全く言うことを聞かず悪戯して怒らせてばかりな奴で大嫌いなんだそうだが。
一度だけ会ったときにその弟さんからも聞いたんだが、弟さん曰く、エリザはいつも怒ってばっかりで指図してきて腹立つ…というんだ」

「ただの姉弟のケンカにしか聞こえないんだけど…」


自然とあきれた声になってしまう。
端から聞いていればただの姉弟げんかなのだが、本人達にしてみれば大っ嫌いにもなるのだろう。


「私もそう思う。
ただ、両親も手がつけられないほどで、もうどうにもできないという状態だ。

ところで…なんだ彼氏つくるつもりなのか?
も、もう嫁にいってしまうのか?
そんな、もういなくなってしまうのか?
そんな、そんな」



だめだ、始まった。

彼氏云々の話をすればこうなるのは目に見えていたはずなのに。
何故父に訊いた?私!!!



心の中でそう叫びながら、ヒステリックに陥る父親をぼんやりと眺めていたティアだった。