「ん~…あ、そういえば、エリザベスさんの甥っ子さんが、首都の魔法学校でいい成績を出してると聞いたが…どうだ」


この時、エリザベスの耳がピクリとしたことには誰も気付かない。


「何よ、どうだって……。
その人のこと知らないし、彼氏もなにも─」


ないわよ、と続けようとしたところで、ガシャンとガラスが割れる音がする。

イリアと二人音のした方を見ると、エリザベスが持っていたワイングラスが粉々になっていた。

「おい?!エリザどうした?!」と呼び掛けながらガイアがエリザベスの顔を覗き込む。


「か…し……い…た?」

「はい?」


エリザベスがぼそぼそと絞り出した声はティアの耳には届かない。

エリザベスが大声を出した。


「彼氏って言った?!!!!」


その尋常じゃないエリザベスの様子にその場にいる誰もがビビる。

どうやらティア達の会話がエリザベスの感情爆発の引き金となったらしいが、本人達にも悪い要素が分からず、困惑していた。


「今、甥って言ったわね?
私の甥って言ったのよね?!」

「え、ええ」


ティアの返答にエリザベスの顔がさらに凶悪になる。


「駄目よ!!あれは駄目よ!!
あんな奴の息子なんて絶対駄目!!!

許さない!!許さないわ!!!!」


鬼気迫る形相でティアに詰め寄るエリザベス。
いつもの、ティアの決断を応援してくれる母の優しさはどこにも感じられない。

むしろ正反対だ。