ジュニがルカに悪魔の形相で問い詰めている間、ユリアの試合が行われた。


試合開始合図が出るとすぐ、ユリアは懐からペンと紙を取り出す。
そして防御魔法を張って、その中でいきなり紙に何かをかき始めた。

対戦相手が大きな岩を防御魔法にぶつけてきても、怖がるそぶりもなくかき続けるユリア。

対戦相手が3度目の岩をぶつけたとき、ようやくユリアは顔をあげた。


その顔はすっかり自信に満ち溢れている。


「準備オッケー…♪
それじゃあいくわよー!」


そうしてユリアが唱え始めた知らない呪文に観客の多くは首を傾げた。
アンジュやユーリもユリアが唱えた呪文を知らず、?を頭の上に浮かべている。


「なぁ…あれ、なんの魔法だ?聞いたことねーんだけど」

「見てれば分かります」


そう言ってユーリをあしらうレインは、ユリアが唱えた呪文に驚きを隠し得ない。



呪文を唱え終わったユリアの前には…黒い馬に乗って黒い甲冑を着た騎士が立っていた。
兜の隙間からちらりと見える顔は随分と端正だ。


「いっけぇー!デューク!」


ユリアの言葉に応えるように騎士が対戦相手に突進していく。
対戦相手が騎士に魔法で攻撃するも、全く効かない。

対戦相手の前まで来たとき、騎士の乗る馬がいななき声をあげた。


げしっ


馬が対戦相手を踏みつけた。

ぐえっと声をあげて対戦相手が倒れる。

ふらふらと白いハンカチを振って。