残念ながらユーリとユールの試合時間は重なってしまった。

しかし、運良く試合場所は隣どおしだったため、ティア達は二人の試合を同時に見ることにした。



二人の試合は、流石双子と言いたくなるものだった。

試合開始合図が出されて、ユーリとユールは同時に全く同じ魔法で水砲を相手にぶつけた。
それに二人の対戦相手はどちらも防御魔法を張ったのだが、また二人とも同時に全く同じ魔法で相手の防御魔法を破った。

そして、これまた同時に、全く同じ魔法で空気砲をぶつけ、相手を気絶させた。


試合が終わったユーリとユールは早速言い合いを始める。


「おい!お前真似すんなよ!」

「私試験内容聞いた時からこうしようって決めてたの。
真似したのユーリの方じゃない」

「んな訳ねーだろ?!
全く同じで気持ち悪かったぞ‼」

「それこっちのセリフなんだけど…!」


別々の試合で、全く意図してないのにこのシンクロ。
流石双子と周りは関心しているが、本人達にとっては面白いことではないらしい。

さらにヒートアップしそうなケンカにレインが仲裁に入る。


「まぁまぁ、そんな下らない低レベルなケンカしてないで、落ち着いて下さいよ。
ワンコ達」

「「ワンコじゃない!」」


レインの仲裁でなんとか言い争いが終結したのをわきに、ユリア、ティア、ルカは次に試合をするアンジュを精一杯励ましていた。


「「大丈夫!頑張れ‼」」


そう言ってもなかなか顔が明るくならないアンジュに、今度はルカが声を掛ける。


「自分が練習したことを出せればそれでいいんだろ。
お前の相手はそんなに戦闘慣れしてる奴じゃない。
スピードが速いわけでもないから、落ち着いてやればお前でも魔法発動するくらいはできる。

試合開始ですぐ練習した魔法を発動する。
簡単だろ」


ルカはアンジュの頭をぽんぽんする。

それに安心したようで、アンジュはルカに向かってほわっと笑った。




「なんで?!なんで私じゃダメなの?!」

「まぁまぁ、落ち着いてティア」