秋が過ぎて、短い冬が終わり、春を迎え、また訪れた夏の与那星島に、小さいけれど島民待望の診療所が開設されました。
院長先生はもちろん、ニィニィ。
時々、那覇の大学病院から応援医も来てくれたり、葵ちゃんも留学から戻って来てフリーランスの医師になり診療所を手伝ってくれています。
小さい頃からのニィニィの夢がとうとう現実になったんです。
美波とケイちゃんも看護大学を卒業したら診療所の看護師として勤務する予定です。

診療所ができたおかげで、オバァもわざわざ石垣島の病院へ行かんでもお薬がもらえるようになったので、体への負担も少なくなりました。
そんなオバァのところに久し振りにあったのです。
ウシラシが。
8月13日の早朝だったそうです。
カフーだと、いい報せだと、台風が来よーると、オバァは言いました。

そして、ついに運命のその日がやって来たんです。
8月の終わり。
あの、未だかつてないほどの大型台風の日が。

前日から不気味なほど生ぬるい風が強く吹いとって、翌日の昼にはフェリーも運休になると聞き、那覇におった美波は1日早く島へ帰りました。
台風の当日はもう朝から突風に近い風が島中に吹き荒れとって、診療所も午後から休診になり、久し振りにニィニィと一緒にオバァの家で昼ご飯をごちそうになって、台風の上陸に備えとったのです。
夕方になるとついに雨が落ち始め、一気に強風が吹き荒れ始めました。
島に台風が上陸したのはちょうど日が暮れ始めた頃でした。