榎本さんの追悼個展へ行き、ニィニィの中でどんな変化があったのかは分かりません。
どんなにしつこく聞いても、教えてはくれませんでした。
ただ、東京から帰って来たニィニィはびっくりするほど晴れやかで、生まれ変わったみたいにすっきりとした表情で言ったんです。

これが、僕がずっと見ていた風景だったみたいなんだ、と。
今も、どんなに頑張っても全く思い出せないんだけど、僕の見ている風景にはいつも同じ人がいたんだ、と。
榎本さんから受け取った、ネェネェがショーウインドウ越しに純白のドレスを見とる写真を愛おしそうに見つめながら。

その数日後。
どんな運命のイタズラかと思いました。
今度は他の誰でもない、ネェネェからニィニィ宛てに1枚の写真が届いたのだから。
“カフーを待ちわびています”なんてメッセージまで添えられとるし。
白いラベンダー畑の写真はネェネェが撮ったのですか? 
白いラベンダーに何か意味がありそうだねと、ニィニィと一緒に調べて笑ってしまいました。
花言葉が「あなたを待っています」だったから。

だけど、その返事をすぐに出せんかったのにはわけがあったんです。
オバァです。
ごめんなさい、ネェネェ。
ネェネェには絶対にいうなとオバァから口止めされとったので、手紙には元気だと書き続けていたけど。
ネェネェから白いラベンダーが届いた翌日でした。
オバァ、玄関先で倒れとって、急遽、石垣島の病院へ運ばれ入院したのです。