あの手紙を読んだ時、ニィニィは美波とオバァの前にもかかわらず、声を上げて泣いたんです。
何がこんなに悲しいのか分からない。
でも、胸がつぶれてしまいそうなくらい悲しい。
そう言って泣いとりました。

その翌日のことでした。
夕方のニュースで知りました。
榎本潤一さんというあるひとりの男性の死を。
一緒にご飯を食べながらニュースを観とったら、ニィニィが突然言うので驚きました。
5月に浜で会ったひとだ。
陽妃さんの写真を置いて去って行ったあのひとだよ。
なんてニィニィが言ったんです。

それから数日後、ネェネェから北海道へ転勤になったと連絡をもらったけど、美波、そのことはニィニィには伝えませんでした。
さらに数か月経ったある日、榎本さんの追悼個展のことをネットで知ったニィニィは東京行きを決めました。
追悼個展に行くと。
あのひとがなぜあの時、この島へ来て、自分にあの写真を渡して行ったのか。
あのひとが僕に本当は何を伝えたかったのか、知りたいんだ。
なんて言ってました。
7月、ニィニィは東京へ向かいました。