この人の頭の中はどうなっているんだろう。


バカにするような態度にカチンときてしまった。


「それ」


「え?」


「それ、かして」


あたしは男のカメラにつかみかかった。


「現像したら訴えるから!」


「ちょっと待って」


「だって! 無断で撮って盗撮じゃない! 立派な犯罪です!」


「引っ張るなよ、壊れる」


「壊されたくないなら渡しなさいよ!」


「無理! これには人生が詰まってんの!」


「何が人生よ! 大袈裟!」


「これだから芸術が分からないやつは」


「盗撮が芸術だって言うの?」


カメラを奪い合っていると、


「分かった! 分かったから! 降参します!」


男はあたしからカメラをぶんどって、慣れた手つきでフィルムを取り出した。


「頼むから壊さないで。古い型だけど一応商売道具なんだ」


確かに高そうな一眼レフだ。


「ああ……苦労したのに」


男はため息混じりにぶつぶつ言いながら、取り出したフィルムを未練じみた目で見つめる。


デジタルが主流になった今、フィルムカメラを使っているところを見ると、こだわりを持っているのは分かる。


写真家……なんだろうか。