顔立ちは爽やかだし、スタイルだっていい。


なのに冬なのか夏なのか分からない服装で、いかにも胡散臭い。


ふざけているのか真面目なのか分からない態度だし。


だけど、なぜかその目があたしに奇妙な興味を抱かせた。


人を食ったような目を、男はしていた。


ジロジロ見ていると、男はレンズ越しにあたしを見てさらりと言った。


「もう1枚撮ってあげようか」


「結構です」


固い声で断ると、男はからからと笑った。


「バッサリだなあ。まあ、人物を撮るのは好きじゃないんだけどね」


「なら、どうして撮ったんですか」


「あー本当だ。何でだろうね」


「はあ?」


人をバカにしてるんだろうか。


何を考えているのか分からない。


つかみどころのない人だ。


「でもあれだ。しいて言うなら美しかったから。とでも言っておくよ」


男は顔からカメラを離し、えへらと笑った。


「君の横顔が世界遺産に見えたから、かな」


「はあっ?」


「あ。嬉しくない。真面目に言ったのになあ」


最悪。


そのふざけているとしか言いようのない理由と、人を小馬鹿にしたような笑い方に顔が引きつる。