「ゆっくり話すから、よく聞いてろ」


まだ怯えたように、首だけコクッコクッと動かして。

なるべく怖がらせないようにしているが、どうも苦手だ。



「まず、俺の名前は高木悠。21歳だ。昨日お前が道路に倒れていて、怪我があまりにも酷かったから家まで連れてきた。とりあえず手当は一通り終わったとこ」


もう一度首を振る。


今の状態は分かったようだ。



「その様子見てると、あまり喋れないんだろ?俺が今から質問するから、答えられるのだけ答えて」



「…は、い」



「名前だ、名前は分かるか」



少し首を傾げて、うーんと悩む姿に正直少し可愛いと思った。



「…藍、です。難しい方の」



「ん?苗字は分かるか」


そう聞くと戸惑うように目を俯かせた。


「わ、からない。ごめんなさい」


「そっか。それと、謝らなくてていいから。答えられるものだけでいい」