藍side
手に感じた温もりに目をそっと開けると知らない人が私の手を握っていた。
目つきの悪い切れ長の瞳。
怖い。
肩がガタガタ震えるのがわかった。あぁ、嫌だ。死ねると思ったのに。 私はまた拾われたのか。
なんの意味もなく生きること以外に辛いことなんてないだろう。
…けれど。
この人は変わってる。
驚いて悲鳴をあげても、手を叩いてもこの人は怒らない。
声だってろくに出せないのに、ゆっくりでいい、って。
無理しないでいい、って。
私のことが、心配って。信じていいって。
…おかしい。
こんなの、裏があるとしか思えない。きっと、高木さんも裏切る。どうせ、私をほっとさせてから、思いきり暴力を振るうんだ。
こんな捻くれた性格をしているのも、心ではこれだけ毒づいているのに、実際人みれば声出せないただの弱虫ってのも知ってる。
なのに。なんでこの人は怒らないの。