髪、さらさらだ。
ふわり、とシャンプーのいい香りがする。
前髪は全くと言っていいほど切り揃ってなくて。
近いうちに美容室行かないとな。
…なんて。とりあえず預かったものの、ずっとこのままなんていいわけがない。
まだ、藍の事を一つも知らないんだ。
家族はいないと言っててもこいつが生きているんだから。
親が生きている可能性はある。
そっと藍を見てみると、気持ちよさそうに目を瞑っていた。
怯えたり、懐いたり忙しいやつだな。
「よし。終わったぞ」
なるべく、優しい声を意識して、声をかける。
そうすればそっと、ありがとうと呟いた。