(ここを、こうしてっと・・・)少しいびつだけど、歩くのには支障ないだろうと思いベンチに腰掛けている女の人に履かしてあげた。「ほら、大丈夫ですよ歩けると思いますよ」声をかけた瞬間彼女の顔を見ると涙であふれていた。「あの、僕余計なことを!」彼女の前で頭を下げた。見知らぬフリをしたかった、でも我慢できなかったんだ。僕のバイト先の喫茶店でびしょ濡れで現れた彼女だと分かったから声を思わずかけたんだ。
彼女は店内に座っていた時も無表情に窓辺から外を見て、涙を流していて僕はその姿が不謹慎ながらも綺麗だと思ったんだ。
「違うの、ごめんなさい。ただ・・・」私は言葉にならない気持ちに泣く事しかできなくて、それでもこの男の子は「じゃ、よかった。あ、あと30分もバス来ませんね。」そう気にしなように私笑顔を見せてくれた。
「雨って僕すきなんですよ、降り終わった後、虹が架かるじゃないですか、新たな始まりの門出のアーチみたいで大好きなんです」そう彼は言いながらきれいな傘をさしながら「隣座っていいですか?」そう言いながらベンチに腰を掛ける。
「お兄さんは純粋だからそう思うんですよ」私が笑いながら意地悪を仕掛けると、男の子は「でも、お姉さんにも見れますよ」根拠のない言葉なのに何か胸の奥できゅっと締め付けられるように思えた。