「半年ぐらい経ってくると誰も本当の気持ちを言わなくなった。言わないのが当たり前になってきたんだ。」

私は相槌を打つことしか出来なかった。

「そしたら連れが自殺した。」

俯いてた顔を上げるとコウちゃんはただ真っ直ぐ海を見つめていた。

「連れが首を吊ってたのを最初に見たのはあいつだった。それから狂ったように連れの名前しか言わなくなってしばらくして姿を消した。理由が分からなくて連れもいきなりいなくってやっとあいつの気持ちが分かった。これがあの恐怖感だったんだって…あいつはこの恐怖感の中にずっといたんだ。自分の気持ちを言葉にすることが苦手だったあいつは誰にも分かってもらえずにこの恐怖の中にずっといたんだって思った。それからは体が勝手に動いてて、日本中を探したよ。金を稼ぎながら日本中を回った。でも見つからなかったんだ。もう…」
続きを言いかけて私は叫んだ。

『絶対に見つかるよ!コウちゃんが来るのを日本のどこかで待ってるよ!』
苦しかった。
呼吸がうまくできなくてそれ以上言葉が出なかった。

「あぁ…」
そう言って笑ったコウちゃんの顔を見てやっと呼吸ができるようになった。