コウちゃんが来て2ヶ月が経ってすっかり家族の一員になった。
一人になって寂しかった私はお兄ちゃんのように慕った。

仕事が終わりいつものように夜の海へ出かける。

海を眺めてボーっとしていた。

「隣いい?」
声がして振り向くとコウちゃんがいた。
私が『うん』と言うと横に座った。

『こうしてると初めて潜った日の事思い出すね。』
海を見つめながら言う。

「あの時にさ、色がないって言ってたじゃん?いつから?」
コウちゃんも海を見つめている。

『アキね、ここ来て1ヶ月経った頃に酔っ払ってシンと夜の海に入ったの。何でそうなったかは分からないけど溺れちゃったみたいで少し長く呼吸ができなくなったせいで記憶がなくなっちゃったんだ。目を覚ました時から色がなかった』
海から目を反らさない。

「その前のことは全く覚えてないの?」
気遣いなら聞いた。

『うん…覚えてない。』
そう言ってコウちゃんを見る。

『思い出そうとするとね、頭が痛くなるのそして怖くなるの。何でかは分からないけど、思い出しちゃいけない気がする…でも、コウちゃんが初めて私のこと呼んだとき凄く懐かしい感じがした。』
そう言って笑った。

「そっか…」
悲しい笑顔だった。