「嫌だよぅ。嫌だよぅ」




目の奥から熱が込み上げてくる。




上を向いて必死で抑えた。




それでもどんどん熱くなって、
更に顔を上げていると、
一本の桜が逆さまになって見える。




4月なのに蕾一つつけていない
不思議な桜。




『この桜は儚桜と呼ばれていて、
奇跡を起こしてくれるんだって』




そういえば
昔、あの人が言っていたっけ。




『そんなの迷信』




当時の私は突っ放したけれど、
今は儚桜とやらにすがりたい。




こうやって絶望しているとさ、
救世主が現れて、
ストラップが見つかっちゃって
ハッピーエンド、
みたいな。




儚桜なら起こしてくれるんでしょう?




一生のお願いを使ってもいいよ。








儚桜、こんな私にどうか奇跡をーー