私と啓さんが紋別に戻ったら、外で仕事をしていたらしい政さんに早速見つけられて駆け寄ってきた。
その顔は満面の笑み。
「2人ともおっかえり〜!どうだった?楽しかったべ〜?」
私が「はい!」と元気よく答える前に啓さんが政さんの頬をつねって、なんとも言えない凄みのある笑みを浮かべてつぶやいた。
「お気遣いどうも、政。これからは絶対に余計なことするんじゃない。でもとりあえず、ありがとう」
「いてててて、顔と言葉と行動が全部伴ってないしょ!泣いて喜んでお礼言うところじゃないの〜!」
「だから言ったべ、お礼」
泣き顔になりつつある政さんから手を離した啓さんは、私に「先に家に入ってる」と声をかけて行ってしまった。
つねられた頬を痛そうにさすりながら、政さんが私に弱々しく話しかけてくる。
「強行手段は手荒すぎた?でも、うまくいったんだべ?深雪ちゃん」
「どうにかこうにか……。誤解もお互いに解けまして……」
「あらららら。いいこといいこと〜」
今思えば、政さんは私たちがそれぞれ抱いていた想いと勘違いを把握していたのだ。
お互いに聞く耳も持っていなかったというのが遠回りした一番の原因でもあるけれど。
彼はいつもやきもきしていたのだろう。
政さんは諭すように私に微笑みかけてきた。
「あいつ、異常なほど気持ちは心に隠すタイプで、基本ぶっきらぼうで愛想ないから」
「はい、分かってます」
「そして異常なほど照れ屋だから」
「はい、分かってます」
「さらに言うと異常なほど犬が好きだから」
「はい、分かってます」
「でもきっと、誰よりも深雪ちゃんのこと大切にしてくれっから」
「………………はい、ありがとうございます」
最後らへんは、だいぶ私も照れてしまって政さんの顔を見れなかった。
そんな私を眺めて、彼は自分のことのように喜んで笑ってくれた。