啓さんにとっては東京に田舎があるかどうかなどそんなに気になることではないらしく、実家に関する質問は出てこなかった。
代わりに的はずれな言葉を口にする。


「東京はディズニーランドのイメージだな」

「ディズニーランドは千葉県です」

「それくらいは知ってっから。行ったことないけど。じゃあなんで千葉にあるのに東京って言うんだべか?」

「………………さぁ」

「俺はそれよりジブリ美術館に行きたいわ」


ディズニーランドに行ったことがない、ということにツッコミを入れようか迷っていると、私の好きなジブリの話が割り込んできたので思わず笑顔になってしまった。


「啓さんジブリ好きなんですか?私もです!」

「どれが好き?」

「魔女の宅急便と〜、トトロと〜、ハウルと〜」

「ミーハーだな。俺はナウシカと紅の豚」

「………………」


基本的に合わないのかしら、私たちは。
無言で啓さんの横顔を眺めていたら、彼は面白そうに吹き出していた。


「いつか案内してもらおうかな。東京に行くことがあったら」

「はい!喜んで!」


そんな日が来るのかは不明だったけど、啓さんが東京の街にいて、私と2人で歩く姿を勝手に想像して。
なんだか嬉しくなって気分が盛り上がってニヤニヤした。
感情を隠し切れない私の顔をルームミラー越しに啓さんに見られ、フッと鼻で笑われた。


━━━━━やっぱり犬みたいだな。
と、言われている気がした。


なんとでも思って下さい。
啓さんだから嬉しいんです。
こんな話を当たり前のように出来ることが、私には幸せなのだから。