帰りの車の中で、妹からのラインを何度も読み返していた。
新千歳空港に何時に着く飛行機で来るのか、何時の電車に乗って札幌まで来るのか、何時のバスに乗って紋別まで来るのか。
「紋別のバスターミナルまでは俺が迎えに行ってもいいよ。タクシーだとけっこう金取られっからさ」
コンビニで買ったホットコーヒーを飲みながら啓さんがそう言ってくれたけれど、なんだか気が引ける。
せっかくの休みなのに、私の妹のために申し訳ないような気持ちになったりして。
「でも……いいんですか?迷惑じゃないですか?」
「全然。迷惑なわけないべさ。妹って深雪に似てるのか?」
啓さんは私の妹に興味があるらしい。
こんなに落ち着きのない私が姉なのだから、妹も相当なものなんじゃないかと思っているようだ。
「それが……似てないんです。顔はまぁ姉妹なんでそれなりに似てるんですけど、性格は真逆です」
「どういうこと?」
「めちゃくちゃ大人びてるんです。人生設計をしっかり立てていて、私をいつも叱ってくるんですよね……ちゃんとしなさいよ、って」
「想像つかない」
「アレですよ。つまり買い物に行って衝動買いする私に比べて、妹は欲しいものをリストアップしてそれだけを買うタイプ」
「……………………よーく分かった」
そんな計画的な妹に限って、急に思い立って私のいる北海道に来るなんて何かが引っかかるんだけど。
ラインの文章には余計なことは書かれておらず、『姉ちゃんのところに遊びに行くね〜』という簡単なもののみ。
「田舎くさい深雪と違って妹は都会人って感じなんだべ、きっと」
勝手にきらびやかな妹の姿を想像しているであろう啓さんに、私は人差し指を立てて忠告してやった。
「失礼なっ!いいですか、東京出身ってだけで都会人だと思ったら大間違いですよ?私の実家は八王子なんです。知ってます?八王子」
「名前くらいは」
「すごいですよ、普通に田舎ですから」
まぁ、田舎というのは言い過ぎだけど、新宿とか渋谷とか原宿とかあの辺を想像して東京と呼んでいるのなら、それは八王子は当てはまらないということだ。
それはそれは緑に溢れた自然豊かな場所なのだから。
私の実家はそんな場所にあったので、社会人になってからは職場に勤めやすい場所に一人暮らししていた。